成功する母

さて、先日、ブックオフの100円コーナーに並んでいた「新説 母馬血統学――進化の遺伝子の神秘」が一口馬主が出資馬を選ぶにあたって、ヒント満載でしたので、紹介します。

この本の主旨は、馬の進化という点では、牡馬が中心になるものの、牡馬ではなく、母馬に焦点を当てようという主旨で、イギリス競馬の成り立ちからファミリーナンバー、そして、小岩井農場、下総御料牧場といった日本の牝系まで幅広くカバーされており、とても読み応えのある本です、ブックオフ100円は勿体ないです。

一口馬主という点で興味深いのは、第4章 「成功する母 - 名牝の条件」、まさにどんな母が成功するのか、あくまで確率的ですが、勉強になります。まず、いわゆる、名牝と呼ばれる歴史的な牝系は、子だけではなく、

血統的な影響力は一代限りというものではなく、父系、母系の両面から絶大な影響力を及ぼしていく。母系が名門のファミリーで、祖母や曾祖母が名牝だったり、近親に活躍馬が多く出ている場合も、未勝利の母親からとんでもない名牝が生まれたりする。(p124)

なので、母親が未勝利で終わっていても、隔世遺伝というケースはよく起きる。まあ、これはありますよね。なので、母親が走ってないからといって、それをマイナス材料にしなくてもいいケースがあると。くわえて、イギリスの名ブリーダーであるヒスロップの生産技法から走った牝馬が必ずしも良い繁殖牝馬になるとは限らないと指摘する。

「ブリーダーは、競走馬として類まれな牝馬が、繁殖牝馬としても同じような能力を持つことことなど、ほとんどあり得ないものと理解しておく必要がある。それでも彼女たち(の血)が、後の世代において平均よりはるかに強い馬を出す可能性は高く(以下略)」(p136)

という意味で、走った牝馬の仔は高くなりがちですが、それが走るというより、その後の世代に妙味がありそうです。

そして、もう一つ、母親の出産時の年齢です、これははっきりした結果があって、「母馬の繁殖成績は、15歳あたりから下降する」(p139)、G1ウィナーに限れば12歳までと指摘する。まあ、これもあくまで”確率”の話で、獣医学、医療の技術、設備が進歩した今日では15歳を超えても活躍馬を出すケースも増えてきているという。

じゃあ、どんな繁殖牝馬が良いのか?現在、世界最高の繁殖牝馬群を擁するドバイのマクトゥーム・ファミリー。そのブレーンとして働くマイケル・グッドボディは、繁殖牝馬を選ぶ条件として、

血統が良くて競争成績が悪かった牝馬より、血統のよい不出走の牝馬の方が、繁殖牝馬として優れていました。これまでも、不出走の牝馬から、かなりの数のチャンピオン馬が出ているでしょう。繁殖牝馬が13歳までに、重賞勝ち馬を出していない場合は、売り払ったほうがいいかもしれません。それから、これも私たちの牝馬の例ですが、6歳から11歳までが母馬としてのピークです。この時期にベストな産駒を出す可能性をもっています。

まあ、これが正しいとは限りませんが、とてもよい示唆と思いました、今年のドラフトはこれをちょい参考にしてみたいと思います!

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