優駿(宮本輝)と目線の高さ
競馬に限らず、どんなことでも、その世界をいろいろな側面から知ることはとても重要だと思います。
で、馬主をやる以上、もう少し競馬について知りたいという思いから、競馬に関する本を最近読んでます。
そのなかで、一番、印象にのこったのが、「優駿」(宮本輝・新潮文庫)です。
もう30年近く前の本ですが、いまでも色あせることなく、不世出のサラブレッド オラシオンが生まれる牧場サイド、おそらく社台ファームをモデルとしている吉永ファーム、馬主サイド、調教師・騎手サイド。オラシオンという1頭の馬を中心としたサークルの人間ドラマがあますことなく描かれています。どちらかといえば、自分は馬主のサイドの和具平八郎に近いかもしれないですね。彼の最後のチャレンジもいいなとも思いました。
もう一つ考えさせられたのは、最後の方でオラシオンを生んだトカイファームの博正はこう語る。
俺、もしきょうセントホウヤが勝てなくても、いつか吉永ファームが生まれ育った馬が、日本の重賞レースの半分以上に勝つ時代が来るように思うんだ。資金力じゃなくて、競走馬に対する考え方が、日高や浦河の連中よりもはるかに先を行ってる。その努力は、やはり結果として出てくるはずだよ。
それから30年、この”結果”は明らかですね。小説では、セントエストレラ(おそらく、ノーザンテースト)の仔が活躍しはじめたころで、そこから、サンデーサイレンス、はたまた、ディープインパクトと社台ファームが日本の競馬のレベルを上げたことは疑いの余地はないと思う、で、これは単に偶然ではなくて、30年、さらには最も前から、世界を見て、世界に通用するよい馬を作ろうという目線の高さが結実したともいえると思ったのでした。これはどんなビジネスも同じですね。高い目線で先を見て、そこからできることを精一杯やる。こんな目線を身につけたいものです。
優駿〈上〉 (新潮文庫) | |
宮本 輝
新潮社 1989-11-28 |
優駿〈下〉 (新潮文庫) | |
宮本 輝
新潮社 1989-11-28 |
はじめまして。
ヤエノムテキと申します。
私もJRAの馬主資格を昨年取得しました。
愛読書が「優駿」ですので、思わずコメントしたくなりました。
この小説は本当に名著ですよね。多田の友人の佐木が付き合っていた女が、「馬は鼻で息をするんですよ。」という話をするところが好きで、スタリオンで実際に鼻の穴の大きさを見せてもらったりしました。スタリオンではキンカメやカナロアが大きいそうですよ!
これからも訪問させていただきます!!よろしくお願いします!
はじめまして、ヤエノムテキさん
コメントありがとうございます、承認制になっていたようで反映されるまで時間がかかっていたようです、失礼しました。鼻の穴のエピソードも面白いですね、自分も観てみようと思います、ありがとうございます。
「優駿」は出版されてから30年以上たちますが、牧場サイド、厩舎・騎手サイド、馬主サイド、本当によく取材していて、今でも色あせず、とても勉強になりますよね。零細牧場がつぶれて、大手が強くなる、30年後の今をかなり正確に予見しているのもキチンとした取材にあるのかなあと思いました。
17年7月に中央競馬馬主資格を取得されたということは自分と同期ですね!これからもぜひよろしくお願いします!